2013年4月20日土曜日

アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密

東京都写真美術館にて、
『アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密』を見に行ってきました。ハーパース・バザーやVOGUE のファッション誌で活躍したアーウィン・ブルーメンフェルドの初の日本での個展、ということで、写真そのものを見るのは初めてのものばかりでした。

ファッション写真家として有名なアーヴィング・ペンと、リチャード・アヴェドンと共に、50年代のファッション写真を盛り上げた一人。
ファッション写真、という非日常、人工的なクリーンさ、計算された構図など完成度の高さは、今見ても色褪せない作品ばかり。
でも、個人的に好きだったのは、『私のベスト写真100選』という、ファッションではない、彼自身が撮りためてきた白黒写真を100枚セレクトし、2枚ずつ対にして並べたもの。このセレクトのセンス、対の写真の対比が抜群だった。
写真展に行くようになってから、きらびやかなファッション写真ももちろん素敵だけれど、真実を切り取った、ちょっと暗くて怖い写真も、見続けていると、暖かみみたいなものが伝わってくる気がします。

そして、運良くスタイリスト原由美子さんのレクチャー『ファッション誌と写真』も聴くことが出来ました。

1950年代、まだアメリカに勢いがあり、雑誌作りもとても贅沢だったようで。60年代に入り、ブルーメンフェルドらが活躍していくにつれ、ファッション写真が身近に、かつ完成度の高いものになっていったそうです。ハーパース・バザーの名物編集長、ダイアナ・ヴリーランドのドキュメンタリーでも感じたことですが、パリモードのレベルの高さを、誌面で贅沢に表現しているところが、今の雑誌作りとは大きく違うんだなと思いました。

原由美子さんは、創刊時のan an でスタイリストを努めていた、業界でも草分け的な存在。当時のan an をスライドで見せてもらいましたが、今見ても本当にかっこ良い。ただ、売れなくて赤字になり、今の雑誌のような、よりリアルな写真と文字情報を盛り込んだ感じに変わっていったそうです。
an an のフォントが変わってなかったのもびっくり。

ブルーメンフェルドの写真には、ペンやアヴェドンと違って、ただ綺麗なだけではない、柔らかさや、人間味がある、とおっしゃっていました。ペンとアヴェドンはNY生まれで勢いのある時代を生きてきた一方、ブルーメンフェルドはドイツ生まれでフランスから戦後アメリカへ移住してきた、という彼の生い立ちも関係しているのかもしれないと。

また、今の雑誌について、現実的な情報が詰まりすぎていること、特に日本は年代別に細分化されすぎている、もっとイメージ写真もミックスされたものが出てきてほしい、との話があり、改めて考えさせられました。
本当に、ファッション誌が多すぎて差別化が難しいし、情報が詰め込まれすぎて食傷気味で、、という人は私だけではないと思う。

何年後に見ても色褪せない、写真集のようなじっくりと愛でる雑誌があっても良いと思う。コストがかかって売れないのだろうけど、、これは雑誌だけじゃなくて、服にも言えること。

年齢的にも、きちんとしたものを選ぶ選択眼が必要だし、それを磨くために、色々なものを見る、見続けることは大事だと、改めて考えることが出来た一日でした。

2013年1月24日木曜日

筆線の魅力

年明けに、こちらへ行ってきました。

熊谷恒子記念館 : 公益財団法人大田区文化振興協会

熊谷恒子さん。彼女を知ったのは『和樂』の特集。まったく知らなかったけれど、彼女の書と、佇まい、書の道具が愛らしくて、一気に興味が。

記念館の存在を知り、今やっているの『筆線の魅力』展に行ってきました。

現代女流かな書道界の第一人者として有名な方で、皇后陛下の美智子様にご進講されていたとのこと。

記念館は、元邸宅に展示スペースを作ったもの。入り口で靴を脱いで、扉を開けると応接間らしき部屋に。本当におうちにお邪魔してる感じがほっこり。

かな書道については予備知識なしで行ったのですが、私の知っている書道とは全く違いました。

勝手なイメージ、硬いもの、きちんとしてるものを想像してたけど、実際は自由で、アートだった!

土佐日記や万葉集の一節が、こんなにも変化してしまうもの?と思うような、、かな書道だけど漢字を当てて書いてる部分もあり、それでいて奇をてらった感じはなく、力強く女性らしい。

本当のことを言えば、最初は文字として読めないものばかりだったけど、いくつか見るうちに目が慣れて?きたり、分からない中にも色んな発見がありました(笑)

実際に書いていたお部屋や、愛用の道具も見れたし、2階に上がると書のセットが一式あって『記念に何か書きませんか?』と(笑)

そこでは書きませんでしたが、書道やりたくなりました。
今年は日本人らしいことをやりたいし、知識を増やしたいと思います。そして、こういう分野の人への興味がどんどん増えていきそうな予感がしています。

去年の私は愛らしいおじいさんブーム(笑)だったけど、今年はおばあさんかな?熊谷さんは『おばあさま』と呼びたい品格が漂っていました。

そういえば、先日芥川賞をとった75歳の黒田夏子さんも、かな文字で書いてるし、、と、勝手につながり感じたり。

abさんご、気になりますね。

2013年1月12日土曜日

2013

今年もよろしくお願いします!

ここ数年の恒例、初日の出暴走。
今年は格段に綺麗で眩しかった。

高知の海はやっぱりえい。

今年は前厄なので、健康に気をつけます。

Have a great year !

2012年12月19日水曜日

読んでる本のこと。

PC の調子が悪いので、スマホ用のアプリをダウンロードして、携帯から投稿してみます。

きちっとした内容を書きたいと思うと、下書きメモばかり増えるという状態に。
あまりに頻度が低いので、これを機に自分用メモ、のレベルでも投稿してしまいます。

というのも、会社でブログをやるようにと言われたのがきっかけ。
でもちょっとややこしくて、(いきさつは省略)うちのブランドのファンの人を装うという条件付き。。要するに、非公式(笑)

で、はじめて、アメーバブログでブログ書いてるのだけど、架空のキャラで書くのがちょっとストレスで(笑)、本来の自分でブログを書きたい心が出てきたのです。

何はさておき、復活!

さっそく自分メモ。
今読んでる本
『知的創造のヒント』外山滋比古

この中で、外山さんが教科書に出てくる文章の中で初めて面白いと思ったのが、寺田寅彦の『科学者とあたま』だったと書いていた。なんと!

ここへつながった!

並行して読んでるのが
『寺田寅彦随筆集 第一巻』

寺田寅彦の文章は、スルメみたいに、噛み締めながら少しずつ読むのが良いんです。
起承転結が明確で、このリズム感が気持ち良い。

『科学者とあたま』も探してみます。







2012年9月13日木曜日

猪熊弦一郎現代美術館「物物」展へ

夏休み、、香川は丸亀市にある猪熊弦一郎現代美術館へ行って参りました。

猪熊弦一郎は、香川出身の洋画家。三越の包装紙のパッケージデザインなども
手がけていたそうです。

今回観て来たのは、猪熊さんの常設展と、「物物」展。
画家として活躍する一方、コレクターとしての一面も持ち、『画家のおもちゃ箱』(文化出版局 1984)という図版も出版するほど。(これ、買おうかと思ったら中古でも4万以上・・)
これらの物を、膨大な量のなかから、スタイリストの岡尾美代子が気になる物をセレクトし、それを写真家のホンマタカシが撮影した「物物」という写真集とリンクした展示でした。

大きく引き伸ばした写真の前に「物」がちまっ、と置かれていて、また良い雰囲気。
写真の撮り方も良いのですが、やっぱり実物が素晴らしかった!
このコレクションしていたものが、高価な美術品ではなく、道で拾った石ころや、一風変わった外国のお土産品・・など、猪熊さんのアンテナにひっかかった、愛らしいというか、「・・・なんじゃこりゃ!」な数々。。

写真を見せられないのが残念ですが、すごく笑ったのは、
ごくごく普通~の石ころが2つ。白い封筒に入っていて、その封筒に手書きで
「ヴェルサイユ宮殿」と書かれているの。
誰かと一緒に見てたら、100%ツッコんでたはず。笑
写真集を熟読して分かったのは、彼の奥様も一緒に収集していたものがあったこと。
二人の「好き」のベクトルが同じって素敵だなと思えました。

いろんな「物」がわちゃわちゃしてるのに、なぜか統一感があって、
猪熊夫妻に愛されてきたぬくもりが伝わる、良い展示でした。

また素敵なおじいちゃんを見つけてしまったな~

あ、帰りに食べた丸亀うどん、美味しかった!
美術館は駅前にあって、めちゃめちゃ洗練されてるけど、
一歩商店街に入ると、リアル ALWAYS3丁目・・・状態の
年季の入ったシャッター通り。。
美術館が、丸亀の町おこしに一役買っているのは間違いなかった。

ちなみに、猪熊さんが三越のデザイン部にいた頃、同じ部署に
あの、やなせたかしさんもいたらしいです。すごいつながり!!
やなせ先生、長生きしてください!

しかし、久々に更新したから、写真のアップの仕方が分からん・・・


2012年4月23日月曜日

ロベール・ドアノー展

久しぶりすぎる投稿ですみません。。

自分を取り巻く環境の変化に、ようやく慣れて、
落ち着いてブログを書ける状態に、やっとなりました。。

先日行ってきた「ロベール・ドアノー展」@写真美術館
http://syabi.com/contents/exhibition/index-1545.html

今年は生誕100年という節目の展示ということもあり、
今までで一番多くの作品を一度に観られる機会ではないでしょうか。

ちなみにドアノーの写真展に行くのは2回目。
初めて見たのは日本橋三越での展示でした。
今回より小規模でしたが、パリの日常を切り取った感、
何気ない風でいて、計算されたバランスや、くすっと笑える所が、
入りやすくて、且つセンスが良くて、
いつまでも見ていられる作品達にすごく感動した思い出があります。

そして、今回のアーカイブ展で、彼の被写体との向き合い方だったり、
写真をとるスタンス、をより深く知ることが出来た気がします。

「イメージの釣り人」

図録"Rétrospective”の帯にも書かれている
この言葉に、すっと惹かれました。

VOGUEの専属カメラマンに抜擢されるも、生活のためと割り切っていて、結局2年で辞めてしまったり、被写体と向き合うのは恥ずかしいから、いつも一定の距離を取っていた、というエピソードから、被写体と対峙する、アグレッシブなカメラマンではなかったのだろうな、
静かな海辺でじーーーっと棹をたらす釣り人のように、静かに被写体に寄り添って、
ただただじっと、シャッターチャンスを待っている、
そんな彼を勝手に想像してしまいました。

ポートレート写真は、初めて見たのですが、、
ピカソにシャネル、ユトリロなどなど、すごくアクの強い人たちを、
なんともいえない脱力感とコミカルさを交えたものにしていて、
なぜか統一感があるところがすごかった。

そして、、「自分は芸術家ではない」と言う言葉に、ますます惹かれました。
記録としての写真、だからこそ出せる人間味。
もちろん創りこんだ作品や、偶然を装った演技もあるけれど、
彼の写真への向き合い方から出る生々しさが、見る人の心に響く理由のかな。と思う。

見ているとワクワクできる、何の瞬間なんだろうって想像力を掻き立てられる、
難しいこと抜きにして、とにかく好きな写真家です。











2011年12月11日日曜日

ダヤニータ・シン展

資生堂ギャラリーにて開催中の「ダヤニータ・シン展」に行ってきました。

http://www.shiseido.co.jp/gallery/exhibition/

ダヤニータ・シンは、インド出身の女性写真家、日本では初の個展とのこと。
彼女のことはこれまで知らなかったけれど、行ってみてすごく好きになりました。

写真と写真につながりを持たせ、1つの大きな作品として見せる、「彼女自身の写真(ドキュメンタリー)の境界を越えた物語(フィクション)を作り出すという、ユニークな方法(資生堂ギャラリーHPより)」が彼女の特徴。

ありそうでなかった作品の見せ方、ストーリーは見ている人に自由に考えさせる所が
どういう順番で見るのかによっても変わってくるし、想像力を掻き立てられてとても楽しい。

被写体の存在感、眼差しの強さにも惹かれた。
インド人の自信に満ちた雰囲気、自己が確立していて物怖じしない感じ。
家族を撮った「Privacy」という作品では特に感じられた。

色の使い方も良い。インドらしいというべきか、赤の強さが心に残った。
夜景、強く光る赤。鮮やかだけど明るすぎない赤。
色々な撮り方に挑戦しているけど、何となく一貫性があって、
彼女のベースにある揺るがない自己、
写真家としてのセンス、というと軽いけれど、強い精神がそうさせているのかなと感じました。

昨日の皆既月食も、月が赤黒く照らされて、なんとも言えないパワーがあったな。

注目の写真家がまた一人増えました。